居住者インタビュー⑤

居住者インタビュー⑤

コーヒーを飲みに、野菜のおすそ分けに。人が集うオフィスがあります。

プロフィール

お名前:空 かおりさん
    高橋 勇也 さん
    甲斐 貴彬 さん
居住地:津具地区(二拠点)
ご職業:株式会社オリエンタルコンサルタンツ
    中部支社 河川砂防・港湾部 社員

河川や道路などインフラ構築・維持管理事業や発電事業、地方創生事業などを展開する同社。2021年より津具の古民家にワーケーションの拠点として現場事務所をかまえ、設楽町やダム事業の地域振興に関する仕事を行っています。

現場事務所を構えた経緯を教えて下さい。

空さん:地域にお邪魔するときは、宿泊施設を利用するのが一般的です。でも設楽町では住民のみなさんともっと近くで関われる形をとりたかったのです。長いお付き合いを見据えて、事務所を構え、仕事はもちろん地元のみなさんとも関われる場所を作りたいと考えていました。

当社は地方創生に力を入れています。神奈川県開成町では、まちと企業と地域が酒蔵を中心につながることを目的に、瀬戸酒造店の酒造の復活・経営を行っています。瀬戸酒造店で作られた日本酒はパリ開催の日本酒コンクール「Kura Master」で受賞しました。和歌山県白浜町・紀南地域では、交流促進や地域活性化を目指して南紀白浜空港でワーケーション施設を整備しています。当社は何事にもチャレンジしてみようという社風があるんです。設楽町で地域振興に関わらせていただく中で、新たな仕事スタイルや事業にチャレンジしてみたいな、と。

甲斐さん:古民家を現場事務所にする、というのは当社でも初めての挑戦でしたよね。

高橋さん:まちづくりでの活動をする上で地元の方と繋がりやすい環境が欲しい、と空さんが会社に提案して、そこに甲斐くんと僕が「面白そう!」って乗っかったんです。

空:巻き込まれた、とか思ってないでしょう?

甲斐さん:そうですね。どっちかというと自分から突っ込んでいった感じです(笑)。

空さん:甲斐くんが良いこと言ったよね。地図を見ながら「ここって日本の真ん中なんですね。ここで僕たちのチャレンジ始まるんですね」って。ジーンと来たなあ。

地域ともっと深く関わろうと思ったのはなぜですか?

空さん:これまでいくつかダム事業に関わってきた中で、ある現場での経験が大きいです。ちょうど娘が生まれて育休明けの時期で、娘の育児と仕事で本当に忙しくて。娘を連れて地域に関わる時間も多く、地元の方々が娘の面倒をよく見てくれました。子供の世話を通じて、自分たちの町が抱えている課題や、将来こうなっていくと良いなという話を直接お聞きすることができて。コンサルと地元住民、というより1対1で気持ちを聞かせてもらえたことがとても嬉しかったのを覚えています。地域振興に関わる以上、そこに住む方々が住み続けたいと思えるまちづくりを目指したいと思いました。同時に「本当の生の声」って、1回や2回顔を合わせただけじゃわからないんだなあと。ですから設楽町では、地域の方々と心を通わせながら、どっしりこの土地に根付いた仕事がしたいなと考えたのです。

物件はどうやって見つけたのですか?

空さん:貸してもらえる古民家がないか、設楽町役場に相談しました。初めはコンサルタントなんて煙たがられるかな……と思ったんです。でも担当の方に私たちの想いを話したら、すぐ面白がって受け入れてくれて。受け入れてくださったこと、本当に嬉しかったです。

高橋さん:最初にこの物件を内見した時のことをよく覚えてます。ちょうど桜が満開の時期でした。

甲斐さん:みんな一目で物件も土地も気に入りましたよね。自転車でスーパーや郵便局に行けるし、無人販売所もいたるところにあるし。

高橋さん:実際に古民家を現場事務所として活用するようになってからも、「不便すぎる!」っていうことは無いですよね?

空さん:わからない。だって私たち誰一人として都会出身がいないもの(笑)。強いて言えば、まだ冬を経験していないからこの家で寒さに耐えれるかな? というぐらいかな。古い家だし、隙間風に耐えられなかったら何か対策しよう!

ワーケーションの成果としてはいかがですか?

空さん:働きやすい環境に整えるべくこの家を片付けるところからスタートしました。それからも何かと3人で力をあわせることが増えたので、チームビルディングの面でも良い効果があるなと感じています。

高橋さん:遠慮なく本音で議論できるようになりましたよね。天気が良い日は外にデスクを置いて仕事しているんですが、気持ちいいですよ。頭もスッキリするし、近くの川のせせらぎがちょうど良いBGMなんですよね。

甲斐さん:今は名古屋や東京と設楽を行ったり来たりしながら仕事をしていますが、3人とも宮崎・福島・広島と地方出身ということもあり、ココに来ると「ふるさとに帰ってきたなあ」という気持ちになります。

住民との「距離の近さ」はどんなときに感じますか?

空さん:事務所の前に掲示板を作ったんです。そこに私たちの目線で感じたことを、ツイッターのように勝手に発信しています。「今朝の虹は見ましたか?」とか。散歩で通るご近所さんが、掲示板を見て話しかけてくれることもありますよ。

高橋さん:通学路なのでお子さんが大きな声で挨拶してくれたり、3人で草むしりしてると「今日もがんばっとるねえ」ってニコニコしながら見守ってくれたり。

甲斐さん:僕、コーヒーを淹れるのが好きで、ここで時々「カイ珈琲」として、現場事務所に来られる方にコーヒーをお出ししてるんです。「一杯良い?」って地元の方が遊びに来てくれることが増えました。

高橋さん:野菜をおすそわけしていただいて、天狗なすやルネッサンスとまとの美味しさに感動しましたね。

空さん:ここでのシェフ担当は甲斐くんで、設楽のお野菜で美味しいご飯をつくってくれるんですよ。

甲斐さん:手料理はご近所さんにもおすそわけしています。

空さん:先日は事務所をギャラリーにして、大学生アーティストの作品を展示する芸術祭「カッテニシタラ」を開催しました。設楽町のみなさんにお越しいただいて、作品やアーティストさんとのコミュニケーションを楽しんでいただきました。

この場所を拠点にどんどん新しい繋がりが生まれていますね。

空さん:そうなんです! これからも楽しみ。事務所の隣に大きな倉庫があるんですが、ここも自由に使っていいと言ってもらっています。まだ構想段階ですが、キッチンとコワーキングスペースにリノベーションして、住民の方やいろんな企業の方が集まる場所にしたいなともくろみ中です。

高橋さん:ここでさらに新しい繋がりやアイデアが生まれる、なんて考えるとワクワクするなあ。

甲斐さん:このリノベーションを通して、地域の方ともさらに良い関係性を築いていければと思っています。

空さん:設楽町の事業が終了してこのチームが解散しても、次の地域で同じように拠点を構えて、全国に「地域イノベーションが起きる古民家事務所」の事例ができたら面白いですね。